483人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぅ…」
「どうした?」
会社を出てクリスマスムードに包まれた駅までの歩道を並んで歩きながら、雪乃は洋介の腕にとんっと頭を寄せた。
指を絡ませて繋いだ手は洋介のコートのポケットの中にある。
「まゆちゃん、少し不安になってたみたいで…良かったなって。」
「ああ、鳥海も同じだよ。アイツの方が焦ってたかもしれない。河野さんが受付になってから特に。」
「そうなんですね。そういえば今日も声かけられてました。まゆちゃん可愛いから。」
洋介は特に返事をせずに、ポケットの中の組んだ親指で雪乃の親指の背を数回撫でた。
「で、でもビックリしました、花束。」
「そうだな。でもあそこで目立つ事をしたのは、…多分わざとだと思うよ。」
雪乃が洋介を見上げる。
「わざと?」
「ん。…前に雪乃が会社で熱出して俺が送って行った事があっただろ?俺が名前呼んだりして、付き合ってるって知られて。」
「あ、はい。」
「雪乃はその後休んでたからあまり実感ないかもしれないけど、俺は驚いたよ。話の広まるスピードに。」
思い出したのか洋介が苦笑する。
「多分鳥海は、河野さんは俺の彼女だぞ、って、他の男を牽制したいんだと思う。明日中には広まるだろうから。」
・
最初のコメントを投稿しよう!