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床には柔らかな緋色の絨毯が敷き詰められ、調度品の数々は細やかな装飾が施されていた。
洗練されたクラシカルな空間。王座へと続く通路の脇。装飾が施された幾つもの列柱式の柱の間、煌々と燃える篝火が王の間全体を淡く照らしている。
そしてその通路には奇妙な、一枚の布を縫い合わせた衣服を纏う、少女の姿。不思議な事にその少女の背後では、光を呑み込む闇が濃く渦巻いていた。
少女は闇を引き連れ、絶望を纏う、死の御遣い。
いつの間に其処に居たのか。宝石のように無機質で、それでいて突き刺さるように鋭い、王を見据える緋色の視線。
それは――【死】を容易に連想させる。
老婆のような白髪、少女のような幼い顔立ち、そしてその手には鋭利な大鎌。余りにも不釣り合いな、武骨な刃。
だがそれは、数百年と長きに渡りその白き小さな手に在ったかの如く、少女に馴染んでいた。
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