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眩しい朝日は、少年の眠りをこれでもかと妨害する。
このままずっと眠り続けれたら、どれだけ幸せだろうか。そう思いながら、重いまぶたをゆっくり開ける。
暗闇から開放された景色に映るのは、いつもの本棚、いつもの机、いつものテレビ、いつものドア。
誰の部屋とも変わり映えの無い、特徴無い自分の部屋。
布団に包まったまま、少年が起き上がろうとすると、右手に何か冷たいものが触れたような気がした。
……これは……
目まぐるしく思い出される、過去の回想。
あぁ、なんだか思い出すたびに悔しくなる、自分の人生。
しかしなるほどそうか、これで人生をやり直すという手もあるか。
人生リセットボタン。ゲーム上でしか知らない、念願の「強くてニューゲーム」。
人生がやり直せたなら、僕は一体どんな人生を送りたいだろう。
とにかく、今の人生なんてつまらないものだ。
途中まではうまくいっていたのに。
中学二年の頃からか。家に引きこもり始めたのは。
それまでの僕は、学校での成績もよく、テストも学年トップクラスの点数を取っていた。
周りからは「神童」とも呼ばれていたが、そのせいで徐々に人生が狂い始めた。
クラスメイトからは距離を置かれるようになり、徐々に学校にも行かなくなった。
家でパソコンにかじりつき、ゲームとネットサーフィンに没頭する日々。
もうダメだ、こんな生活を続けていては。かといって、今のまま脱却する手段も思いつかない。
ならば、押してみようか。人生をやり直せる、このボタンとやらを。
そうだな、どうせ存在意義が無いなら、いっそのこと透明人間にでもなりたいな。
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