304人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね。藤堂くん……せっかくのクリスマスパーティに参加しに来たのに、私の面倒みてもらって……」
ひとしきり泣いた後、藤堂くんは冷めたコーヒーを口にしながら、首を横に振った。
「いや。俺は不参加で出した」
「え?」
「何もなければいいと思ったんだ。だが、心配だったんだ」
どういうことだろう。
藤堂くんの言葉を不思議に思いながら、私は髪を耳にかけた。
「……そうだよな。こんな言い方じゃあ、伝わらないな」
「え?」
藤堂くんはまっすぐ私を見つめ、黒縁の眼鏡をかけ直した後、
「早瀬が間宮のことで悲しい思いをしていないか、心配だった。だからカラオケ屋の前にずっといた」
「え……と、藤堂くん、なんで知って……」
間宮くんと私が付き合っていたのは、短期間で。
それに、クラスでは公にしなかったからほとんどの人が知らない。
藤堂くんは一年の時クラスが違ったから余計に。
「俺は、早瀬がずっと間宮を見ていたことを知っている。俺も……早瀬をずっと見ていたからな」
「え……あ……」
藤堂くんは、同じ日本史係で。
共通の話題は、歴史とクラスの話くらいで。
「あっ……」
藤堂くんの熱い視線が私にぶつけられる。
.
最初のコメントを投稿しよう!