304人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
沈黙だ。
私はそれを気まずいとは思わない。
2年生になりたてで、係の仕事を始めたころ。
私は彼と仕事をするとき、一生懸命話しかけた。
だけど、藤堂くんは真面目な顔をして、
「無理しないでいい」
と、言った。
それ以来、話題がない時は不自然な会話をすることはなく、黙々と教室に向かう。
藤堂くんは教室が近づくと少し大股になり、ガラガラッと、ドアを開けてくれた。
「早瀬。このプリント、どこに貼ろうか」
藤堂くんが持つのは、社会科見学のお知らせだった。
「あ、次は横浜に行くんだね」
「早瀬は行くか?時代的には明治時代の資料館に行くと思うんだが」
「行くよ。確かに私がすきなのは中世だけど、ね。歴史を知るのはすきなの」
.
最初のコメントを投稿しよう!