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「いたぞ!セルフィラだ!!」
声が消えて少したった頃。
片手に武器を持ち黒いマントを羽織り、マントのフードで顔を隠した人達が私の事を追いかけてきた。
「セルフィラだぞ、逃がすなっ!」
「追え!逃がすな!!」
顔が見えない程まで深く被ったフードでこちらを認識し、不安定な足元でも転ばずに追い掛けてくるのを見ると結構視界の確保はできているらしい。
「そっちに行ったぞ!」
勿論そんな事に感心したまま立ち尽くしているわけにもいかず。
好きでセルフィラとかいうものになったわけじゃない、と思いながら走る足に鞭を打ち必死に走り続ける。
ここで止まれば確実に殺されるという事なんて、子供でもわかる事。
「…っ…はぁっ…!」
最初は夢だと思っていたし、これが現実だとしても全て夢だと思いたかった。
けれども逃げる途中に木の枝で切った手足の傷が痛むたびにこれが現実なんだと嫌でも思い知らされる。
暫く走っているうちに、死にたくないと思う気持ちとどうにかしなくちゃと思う気持ちが息苦しさと混ざり、段々とわけがわからなくなってくる。
「も…嫌、だ…っ!!」
怖さと焦りと痛みと息苦しさで、涙が出てきた。
でも最後まで諦めてはいけないと思い、足だけは止まらないように頑張る。
「…っ!」
森を抜けてもう限界と思った矢先、大きな街が見えてきた。
こんなにも大きな街なら人も沢山いるだろうし、きっと襲う事は不可能に近いだろう。
そう思い、制服の袖で涙を拭ってから最後の力を振り絞り街に駆け込みそのまま雑踏へと入り込む。
私を追い掛けてきていた人達は行きかう人の波に混ざり隠れた私の事を見失ったようで、諦めて去っていったのがチラリと見えた。
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