プロロ-グ。

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自然に囲まれた田舎の小さな村に、鞍馬ヶ丘学園という全寮制の学園がある。 「ねぇ、ちょっとぉー聞いてんの?新汰」 「あー、聞いてる聞いてる」 俺、御陵新汰(ゴリョウアラタ)は、そこに通っていた。全校生徒はおよそ30人。クラスは2クラスしか無くて、年もみんなバラバラだ。そんな俺は、現在高校1年。 「流してんじゃないわよ!全然聞いてないじゃない」 この喚いてる女は俺の現在の彼女、金沢里緒。自慢じゃないが、俺は女にモテる。ま、イケメンだし性格もいいから仕方ないことだけどな。ナルシストじゃなくて本当のことだ。 「悪ぃ悪ぃ。お前の髪がなんだって?」 「だから、髪切ったって言ってんのよ!何回も言わせないで!」 「切ってないけど?」 「あんたじゃなくてあたしが切ったのよ馬鹿!」 「あ、そうなのか?…で、だから何だ?」 その一言で里緒は顔を真っ赤にして、俺の顔を思い切り殴ると、ガニ股で教室を去って行った。ちょっと待て、意味が分かんねぇ。今俺が殴られる要素あったか? 「お前って、女心分かってねーのな」 クラスメートの森川が、俺の席に近付いて来て馬鹿にするみたいに笑って言った。 「今のはあれだろ。似合ってるって言って欲しかったんじゃねーか?」 そうなのか? 「ふーん。でもま、あいつ最近超我が儘だからキレさせとけばいーだろ」 「そんなんじゃ破局の危機だぜ?素直に謝って来いって!」 「ほーい」 しょうがねぇな…。俺は椅子から立ち上がると、教室を出て里緒を探しに掛かった。何処行ったんだあいつ。ってか、寒ぃな。今日一体気温何度だ。 ズボンに両手を突っ込んで廊下を歩いていると、向こう側から担任が歩いて来た。その後ろには、男子生徒が歩いている。「御陵くん、もうHR始まるわよ」 「トイレ行くだけっスよー」 ――――すれ違う瞬間、見慣れない顔の生徒だということが分かった。黒縁眼鏡を掛けていて、かなり整った綺麗な顔をしている。少し長めの黒髪はサラサラで、風に漂って甘い香りがした。 ………誰だ、あいつ。 俺は立ち止まって、彼の後ろ姿を眺めていた。
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