ファブラノヴァクリスタル

5/6
前へ
/68ページ
次へ
孤独になったエトロは、自らの姿に似た母のことを思いました。 エトロは、自らを傷つけて血を流し、消えてしまいました。 流れたエトロの血から、人間が生まれました。 人間は、生まれては、死ぬだけの存在でした。 目に見える可視世界の存在が滅びるのは、呪いではなく運命でした。 世界の総和は定められていて、可視と不可視の世界が分け合っています。 その均衡が崩れれば、やがて、世界は崩壊してしまいます。 ブーニベルゼの母ムインには、運命(さだめ)を止める手だてがありませんでした。 彼女は不可視世界の混沌に飲み込まれようとしていたのです。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加