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意外にもアインスは恋愛面の事はからきしである。
まずアインスはキスという行為を根本的に誤解している。
もちろん感情表現の一つであり、恋人や、または家族間で行うものだという事は、知識として理解している。
ただ、自分のそれとはどうしても結びつかないらしく、特別恋愛感情は乏しい。
と言うよりも、大した興味はないのだろう。
現にレオンハルトの言葉も、戯れの一つだろうと思っている。
レオンハルトは苦笑いをするしかなかった。
「なあアインス、お前は自分の事をもう少し理解するべきだと思うんだが」
「理解しているつもりだが?奴は野心家だ。むやみに話して敵を増やす事などしないだろう」
友人もいないようだしな、と鼻で笑って続ける。完璧に食い違った会話に、最早ため息も出なかった。
「其奴はどうする気だ?」
奇しくもレオンハルトから出た言葉は、ルドルフと同じものだった。
アインスは面倒くさいと謂わんばかりに眉を寄せ、膝に陣取る狸を見下ろす。
「森に置いてきても面倒な事について来る。どうしょうもない」
「よっぽど懐かれているな」
「不本意だ」
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