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「私は……あっ……」
レイナは言葉が出なかった。
そんなレイナを見て紀人は訊いた。
「まぁ、あなたが俺たちを知っているという疑問は置いといて。
1ついいですか?」
レイナは顔を上げ紀人の瞳を見つめる。
その瞳は以前と変わらない自分が知っている紀人の瞳。
そして、レイナはゆっくり頷く。
「どうしてあなたは自らの結婚式だというのにうれしそうじゃないんですか」
「……えっ………?」
レイナは自分の体が強ばるのがわかった。
紀人はレイナの瞳をジッと見つめる。少し恥ずかしくなり頬が火照るのをレイナは感じた。
だが、目をそらすことができなかった。まるで紀人の瞳に吸い込まれているように。
「あなたの目を視ればわかりますよ。顔の表情は笑っているように見えても目が悲しそうにしている」
紀人の意見に和成も便乗して発言する。
「確かに。国民やここにいる全員が祝福してたら普通はうれしいよな。……いや、それ以前にあんたは俺たちが現れて邪魔するかたちになったが、どうしてすぐにここから出ていけって言わなかった?」
「……………………」
またしてもレイナは胸に、心に何かが刺さるのがわかった。
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