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広は少しの間腕を組んで考え込んだ後、ひなたの方を向いて答えた。
「いけるか? ひなた」
「うん! 大丈夫ですよ」
そう言ってひなたは文字通り堂々と銀行強盗の一人へと歩いて行く。
普通に歩いてきたひなたに対して、怯えた銀行強盗の一人が銃口を向けながら叫んだ。
「お前、動くなって言ってんだろ! 撃つぞ!!」
ひなたは相変わらずニコニコとしている。
「銀行強盗さん、私と一緒に遊びませんか?」
銀行員たちが『何考えているんだあの子は! 危ないだろやめろ!』と全員で思っている中でひなたはそう言った。
だが、銀行強盗は彼女を不気味に思ったらしい。銃口が震えている。
「く、来るな! う、ううう撃つぞ!!」
その瞬間、銀行強盗の銃が暴発した。その弾丸は偶然にも真っ直ぐひなたへと向かい――。
――当たらなかった。
ひなたは相変わらずニコニコしていた。
彼女が一歩ずつ銀行強盗に近づくたび、相手は後ずさりする。
そしてひなたは銀行強盗を壁まで追い詰めた。
「もう、終わりにしませんか? 銃をおろしてよ」
「なんだよ!? 何なんだよおまえ!?」
銀行強盗は銃をがむしゃらに撃ち始めた。それをひなたは、手を横に薙ぐだけで撃ち落とす。
「無駄だよ」
ひなたの声のトーンが低くなった。今までの明るい声色とは一線を画した、冷たい声だ。
「おじさんじゃ私を撃てないよ。だって、私は――懐刀だもん」
そのまま彼女は自然な動きで彼の後ろを取り後頭部を強打した。
「ひなた、刀背打ちができるようになったんだな」
「あ、マスター。終わったんですか?」
広の後ろでは、二人の男が気絶していた。腕は後ろで縛られていて、もし意識を取り戻しても動くことはできないだろう。
これだけのことをこの場にいる全員が――ひなたですら気づく前に銀行強盗を無力化したのだ。
「ひなた、警察の人たちが来る前に行こうか。これ以上ここにいるのはまずいだろう」
「はい、マスター。でも、その前に――」
「分かってるよ。ひなたはどんなクレープが好きか?」
「いちご!」
そう言って二人は何事もなかったように銀行を後にしたのだった。
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