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しばらくの後、私は代々木の国立競技場に立っていた。ここに来るのは大学二年の時以来だろうか。
あの時私は、スタンドを埋め尽くした観客が見守る中を、様々な大学の学友たちと隊互を組んで行進したのだ。
晴れがましい気持ちの裏にある、自分達はこれからどうなるのだという不安を心の中に秘めたまま。
「大根…蓮田…」
同じ大学の同じ学部で出会い、やがて意気投合し親友となった男たちの名を呟く私。
現在大根一知(おおね=かずとも)は花巻で個人タクシーを営み、蓮田専一(はすだ=せんいち)はとある理由により医療施設にいる。
貴様らが今の俺を見たらどう思うだろうか。
あの時と何ら変わってはいない、今の俺を見たらどう思うだろうか。
今の私にとって、親友である筈の大根と蓮田は余りにも遠かった。
「こんな時間に押しかける訳には行かないな…」
私はふとそう呟くと、代々木の国立競技場を後にした。
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