9人が本棚に入れています
本棚に追加
念願を果たすために、絶対に死んではならないから――。
「こんな俺でも……」
家族はまた、微笑みかけてくれるのだろうかと口にしかけて止める。
それは限りなく虚しい問いで、スコールは消えかけている火を前に、そこに本当の闇、真の静寂が訪れるのをひたすら待った。
明日も無事に、死神の抱擁から逃れるために……。
「おやすみ、フロスト。……シーナ」
聞こえる筈もない声を家族に向けて、祈る。彼女らにも“明日”がくる事を――。
しかし、スコールの願いも空しく。この数年後、スコールは雇い主からサウスパレス王国の崩壊、及び王国きっての騎士、カイル=グランデの暗殺を命じられる事となる。
この一時ですら、スコールが歩む壮絶な人生の前に用意された、ほんの僅かな“平穏”に過ぎなかったのだから……。
最初のコメントを投稿しよう!