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なにも難しいことなどないのだが、少々おつむが弱い伊東にとってたかが100ページの本でも、哲学書には食指が伸びないのだろう。
「面白いぞ、読んでみるか?」
答えがわかりきっていることを意地悪く訊ねる。
「けっこーです」
「だろうな」
予想通りな伊東の反応がおかしくて、俺は薄く笑った。
モデルのような整った顔立ちもさることながら、こういう素直なところも伊東聖の魅力のひとつだ。
男の俺から見ても見惚れるほどの体躯に容貌。
おまけに天真爛漫で人懐っこい性格をしている。
そしてそれは否が応にも人々の心を惹きつけた。
今だって伊東が現れただけで道行く女子の視線を独り占めにしているし、この見た目だ。騒ぐなと言う方が無理な話なのはわかるけれど、それでもやはり面白くないのは事実だった。
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