32人が本棚に入れています
本棚に追加
黒い煙が俺の目に付く場所で無数に立ち昇り、そのせいだろうか。空には暗雲が垂れ込んでいた
この暗雲低迷とした光など一切通さない空がまるで今の俺の、俺たちの未来を暗喩している様だと感じさせた
希望なんか微塵も転がっちゃいない。代わりに転がっているのは死体ばかりーーここは地獄だ
死体から溢れ出た血潮は身体から逃げ出し地面を黒く侵食し、生温かいべっとりとした空気が肌に張り付く
「‥‥多いな、流石に」
そんな俺の言葉に反応を示したのは、未だにあどけさが残る修道服に身を包んだ少女だった
「んー流石に大軍相手だと私もシンドい。年かな」
少女は僅かに草臥れた様に肩を落とすが、その表情に疲労の色は余り見られず汗一つかいていない
「ぼやくなって。で、損害はどうなってる?」
俺の問いかけに少女の眉間に若干シワが寄る
「ん。他は知らないけど、私たちの部隊の被害は軽微だよ。多く見積もっても軍団長が1人に歩兵隊が50って所かな」
「俺たちの所は上手くいきすぎだな」
少女も軽く笑い同意する。しかし他でどれだけ仲間が死んだのかを考えるとどうにも上手く笑えない
「ま。他は将軍たちを信頼するということで」
辺りが見渡せる山頂から俺は周囲を見渡す。何もない拓けた殺風景な土地を黒い影が蠢いて密集していた。それはおびただしい数の人と魔物がぶつかり合っていた形だった
そして、あの場にいる誰もが同じ事を疑問も持たずに、作業を繰り返している
難しい作業ではないのだろう。目に付く敵を片っ端から肉塊にすればいいだけなのだから
殺して、殺されて、殺して
延々と飽きもせず、狂った様に
「俺たちはあれで終わりにするぞ」
俺がうんざりした様子で指差した方へ、足を向けると部下たちが我先にと新たな戦地へと向かっていく
どいつもこいつも狂ってる。皆、嬉々として死地へ乗り込むのだから。そんな事を思いながら、ゆっくりと大剣を肩に背負う
最初のコメントを投稿しよう!