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大地を乾かし、人々を飢えさせていた眩い太陽の光がゆっくりと影に飲み込まれてゆく。
巨悪は星を剣に、僕へと襲いかかる。
僕に退路はない。
退けば辺りは灰と化し、最悪この星の生きとし生ける者が死ぬ。
【我、地を従えし者…我、天を従えし者…虚ろなる者を滅ぼさん為、我その理を開く…】
僕はあの巨星をこの地上へは落とさせない。
詠唱を続けている間にも巨星が大地へ近づき嵐が起きている。
僕自身が巨星へ近づき地上への損害を最小限にしなくては…。
【風よ、我を乗せ我を運べ…】
足がゆっくりと大地から離れる。
そして、巨星との距離を一気に詰めてゆく。
【我、汝の世界を開かん…我は命ずる!理の扉は今開かれる!】
僕が詠唱していた呪文は禁忌とされた異世界へと繋がる呪文。
詠唱者は物質をイメージし、その物質と強い繋がりのある世界へと飛べる。
禁忌とされたのは詠唱者が物質と共に消え、誰一人として戻らないから。
僕がイメージしたのは空を飲み込み、地上を闇で覆いつくすあの巨星。
「さあ、行こう君の主の元へ…」
巨星を青白い輝きを放つ魔方陣が覆い、僕自身も青白い光で覆われてゆく。
さようなら。
僕はこの地上の為なら、この世界と決別しよう。
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