平和の使者

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これが時空の狭間。 言葉で示すにはあまりに非現実的。 暗く、明るい、白と黒、赤と青、熱く凍てつく、有限にある無限。 その先に着くまでどれ程時間がたったのだろう。 刹那のなかに永遠を感じる程の感覚だった。 だが機は熟した。 僕は狂った五感を一瞬にして正常へと戻す。 故郷を捨て、時空を抜け、人の理を越えた先に彼らは居た。 巨星と共に彼らの世界を空から眺める。 彼らの一人は茨の冠を被り、神殿の階段からこちらを見ている。 もう一人は螺髪した頭に手を添え、横たわりながらこちらを見ている。 いや、数多に存在している。 禍々しく、神々しい者達がこの世界には数多に存在しているのが感じ取れる。 僕は恐怖と畏怖、そして、自らの信念。 何よりも、もう二度と混沌とした世界を創らせないために巨星を放った。 僕の命を使い切ってでも終わらせる! 【焔、冰、全てを薙ぎ払え】 巨星はゆっくりと、だが確実に加速し地上へ向かう。 火と水の属性魔方陣が僕の左右に展開する。 炎の矢と氷の刃が無数に地上を襲う。 僕は全ての魔法を詠唱していた。 全ての攻撃魔法を最大出力で。 巨星も落ちていく、僕は巨悪に勝利した。 しかし、巨悪は今だゆっくりとこちらを見ていた。 薄ら笑いながら全ての呪文を弾いていた。 地上には損害はない、神殿や道路にすら傷一つない。 巨星は加速をやめ、風船のように宙を漂っている。 彼らの一人が僕の背後にいる。 全く気配を感じ取れなかった。 ???『汝が彼の地に出現した特異点か』 僕はすぐに振り返り、腰に忍ばせた短刀を振りかざす。 「消えた!」 辺りを見回すと囲まれていた。 ???『汝は力を持ち過ぎ、汝は主に刃をむける。嘆かわしいことだ。我らは汝を罰する。未来永劫…汝は彷徨うがいい…力を奪われ…自我はそのままに…無力ゆえ嘆き…無知ゆえ哀しみ…無価値…汝に永劫の罰を!』
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