平和の使者

5/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
十二人の光輝く禍々しき者達は二手に別れてゆく。 僕は二手に別れた隙を付き魔法で迎撃するつもりだった…しかし、動かない。 身体が口すら動かせない。 彼らは歌を歌っている。 身体の自由を奪われてなお、背筋が凍りつくほどの恐怖を歌っている。 ???『我ら主を賛美、我ら主を賛美、永劫なる主の導き、虚な世界に慈悲与えん。虚な生命に運命を与えん。虚な者共に主は物語を与えん。主は飢えを、主は殺戮を、主は略奪を下さる。主は生命に物語を与えん…』 彼らは僕の上下に六人、六芒星を描き魔力を増幅させている。 赤く輝く六芒星は僕へむかい僕を包み込んでゆく。 身体の自由が!こんな所で…! 彼らは歌を歌い続ける。 『汝、ユーリ・ヴァハラートに命ずる…汝、永劫の果てに滅びよ…汝、破滅を導かん…』 僕はイメージした。 せめて、平和で争いのない世界もあると思いたかった。 彼らの歌が聞こえなくなった。 闇が光が広がる。 時空の狭間。 ここで未来永劫を過ごすのか。 魔力が使えない。 詠唱の知識も何故か欠落している。 僕は漂う、今はただ時もなく、感覚が狂った狭間の世界を。 僕に世界を与えてほしい。 そう、あの世界。 争いがなく、平和な世界が愛おしい。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!