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「心咲先生、その指輪
婚約指輪みたいですよね」
教務室の自席で作業していた心咲の利き手が側に座る女教師、宮前がそう言って翔から貰った指輪を見詰めていた。
「えっ、あ…
ええ、母親の形見なんですよ」
なんて、苦笑して誤魔化す心咲に
「なんだ、そうなんですか
なんか高そうですもんね
でも、そんなの着けてるから心咲先生いつまでも結婚出来ないですよ
お母さん泣いてるんじゃないですか?」
なんて笑う宮前
心咲は内心、余計なお世話だと悪態を付けつつ
平静を装い、仕事に戻る事にした。
軽く自分の利き手、薬指に光モノを眺める。
着けてないと、翔は不機嫌になるし…
いつも着用していた心咲
しかし、男の自分が女物の婚約指輪等、いつまでもはめていれば
それは変だと思われるのは当たり前で
聞かれれば、さっきの様に誤魔化すのだが
心咲としては、いつもヒヤヒヤものだ。
「職場では外すでしょ普通
そんなキラキラしたモノ
生徒に示しが付きませんよ」
そう不意に聞こえて来た声は、嫌味混じりで
「あ、はい
すみません」
心咲は、咄嗟に指輪を外した。
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