神無月

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「ううん、ここで話さない?」 「いいよ」  チサに離れてまた私はブランコを漕ぐ。  チサはブランコに座ってる。 「覚えてる?ここ」 「ん?」  思い出の場所なのに、忘れてるチサにちょっと悲しくなった。  もう三年も経つからそれはそれで当たり前か。  季節は春、桜が三分咲きくらいでもうすぐ入学式の時期。  私はケータイ小説にハマってた。 「本当に入学祝これでいいのか?」 「これでじゃない、これがいいの!お揃いのリング、まるでコウと由紀みたいでしょ?」  公園の桜並木を歩きながら、まだ少し早い春を思う。 「好きだな、“サクラの約束”」 「うん。最初のシーンにね、同じような季節にコウと由紀がお揃いのリングを買うの。エンゲージリングだって。私もチサと約束したいな、付き合いだして一年だし、ずっと幼なじみって思ってたけど、告白してくれて嬉しかったし、これからもずっと一緒ってゆう約束!」 「いいよ、約束な」  左手の薬指にはめてるリングを見て、チサと笑ってた。
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