キス

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 幸せと切なさのコントラスト。  歯がゆさと心地よさの矛盾。  好きと嫌いのマーブル。 「機嫌の良くないマリアと仲直りをするのは、王子様のキス。別れて初めて口を利かなくなったときに仲直りした時の約束だったよな?」 「そんなの誰も言ってない」  口にしないだけで、二人だけの免罪符だった。  二人だけの秘密だった。  夕暮れの誰もいない教室。  寝たふりをしてる私にそっとタケルが髪の毛に優しくキスをする。  それで私は起きてお互い笑いあう。  そこに「ゴメン」も「仲直り」の言葉はいらない。  それだけでよかった。  喜びと幸せのハーモニー。  でも、私はそれじゃ満足できなくなってた。  悲しそうなタケルに私は唇を噛み締めて俯く。  部活の練習声とか、廊下の生徒の話し声が雑音になって私の耳に届く。  もうどうでもいい。 「言わなくてもいいと思ってた、言葉にするのは6年前に軽いなって感じたから。なんで俺から逃げるんだよ」 「逃げてなんかない、タケルは全然わかってない!私は壊れないよ、ガラスで出来たお人形じゃないんだよ?」  欲望と満足のミックス。  キライはスキの反対。  「ウザい」は「傍にいて欲しい」の暗語。
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