キス

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 ずっと好きで、ファーストキスはガラス細工に触れるみたいに優しくて、雪みたいに儚い。  それじゃ足りない。  それじゃ満足できない。  タケルじゃないとダメなのに、タケルは私に優し過ぎる。  私はタケルが思ってるほど儚くない。  タケルが私と同じくらい私を好きか伝わってこない。 「ダメだ、俺はマリアを壊すから。きっと壊して壊して一欠けらも残さないから。俺だけのマリアが他の男の目に触れるのが嫌だ。同じ時間を共有なんてさせたくない。俺は汚いんだよ」 「っ、アンタのマリア様をなめんなよ」  タケルの頬を打った後に思いきり唇を重ねる。  奪うように求めるように、深く深く。  いつまでも続くんじゃないかって錯覚に、タケルが私を求めてくる。  幸福と快感のシンフォニー。  ようやく手に入れられる心地よさ。  肥大する独占欲は暴走する。  私はタケルにしか愛されたくない。  タケル以外に触れさせたくない。 「ねえ、眠り姫は王子様に唇にキスされて目覚めるんだよ?」 「知ってる。でも、マリアは聖母マリアみたいに俺の中で神聖なものだったから」 「冗談じゃない。命令よ、目を閉じて3秒たったら私を“沙央”って呼びなさい。そしたら、今日はタケルの家に泊まってあげる。6年分を後悔するといいわ、待たせすぎよ」  3秒後、私を沙央と呼ぶタケルがいた。  1年後、私はタケルとお揃いのエンゲージリングをきっと買ってる。  3年後、きっと二人は純白の衣装に包まれてる。  そんな気がする。  ううん、きっと私がそうしてる。  ねえ、タケル。  アンタのどす黒いトコに気付いてないとでも思った?  甘いわよ、甘い。砂糖より甘すぎ。  アンタのマリア様をなめんなよ。  そういうの含めて全部のタケルが私は愛おしいんだから。 End
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