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川辺に、そっと私は腰を下ろした。
夜空に浮かぶ満月の光は微かに弱々しいけれど、確実に川辺を照らし、水流は光を反射したようにきらきらと輝く、魚は流れに逆らうことなく、悠々と泳でいく。
私は、その光景を、ただ、ただ、眺めていた、川辺の土地に植わる太く逞しい大木に背中を預け、ヒューヒューと、口笛を吹く。
現実味のない、夢心地な気分に浸り、ふっと、あるものに気がついた。
蝶々である。
黒い、どうしようもないくらいに黒い、蝶々だった。
両方に広げられた、漆黒の翼は、夜の闇に溶け込むようで、月の光り中では酷く目立つ、私など、一切、気にする様子もなく、ひらひらと飛んでいく。
「美しい」
ただ、ただ、その蝶々を見ていたい。
見ているだけでいい、触れたら、触ってしまったら漆黒の翼を汚してしまうようで、ただ、ただ、見ているのだ。
「美しい」
そう、呟いて…………私は眠る。
静かに、たおやかに眠っていく
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