章之三・―鳴家―

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 俺は今、友人に連れられて隣街のとある家にきている。  家といっても、勿論友人が連れてくるくらいだから人は久しく住んでいない。  いわゆる廃屋、廃墟という類いの場所だ。  何でも、昔この家で一家惨殺だか一家心中だかがあったらしく、それ以来無念の内に亡くなった住人の亡霊、若しくは怨霊が出るのだとか。  特に子供部屋があった二階付近が危険であるらしく、下手をすれば子供の霊に遭遇して、視た者は例外なく呪われる。  そういう噂もあるらしい。  俺は知らなかった。  あまり噂話や怪談の類いに興味を示すと、本物が俺に寄ってくるため、色々と厄介な事になるからだ。  だから友人から話を聞いて初めて噂を知って、何故だか気になったからやってきたのだ。  前回、遊園地で起きた事が祖母の内で根深く残り、結構激しく説教されたばかりだというのに、俺も自分で懲りないなとは思う。  だが、こういう勘はないがしろにしてはいけないと自分の経験から言える事だし、友人だけをこういう危険な場所に一人で行かせる訳にもいかないのである。
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