章之三・―鳴家―

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 周りは草原で、特に危険な物もなさそうで、立ち入り禁止の札もなかった。  心配なのは私有地である可能性だが、あくまでも見たところ、近年誰かの手入れが入った様子もないようだし、家自体も荒れ放題であったので静かにお邪魔して、今は一階部分を探索しているのだ。  玄関を右に曲がり、廊下には右手に一つ、左手には三つ、奥につながるドアがあり、突き当たり左手には二階に上がる階段がある。  右手の部屋は洋間で、テーブルや食器棚があり、硝子戸を経てあるのはキッチンのようだ。  左手前の部屋は仏壇のある和室。  二番目も和室というか居間のようで、ちゃぶ台に桐の棚、壊れたテレビが設置されたままになっている。  そして三つ目。  ここはバスルームになっていた。  ……この家、トイレはないのか?  まぁ不思議な構造のようだが、他人の家の造りにまで口出しはしないようにしよう。
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