レイ

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 「一応聞いておくが、どの辺から見ていた?」 俺の能力は見られてないことを願うしかない。見られてないならわざわざ連れて行く必要もないしな。……ただ、俺が気づかなかったのが若干気にはなる。 「その前に答えて。蒼をどうしたの?」 ……こいつ、この男に似てるな。ちゃんと自分のペースを持ってる。それに少し強情なところも。まあ、こいつのことを心配してるあたり、昔からの知り合いってところか。 ……どう説明しようか。"俺が眠らせたんだ" なんて自分の能力を教えるわけにもいかないし、かと言ってこいつに嘘をついてもばれそうだし。どう説明するのが一番安全なんだ…… 「答えられない訳でもあるの?」  ……まるでさっきまでの俺とこの男みたいだな。まあ、立場は逆転してるが。それにしてもよく見てるな。いくら俺でも、表情をまったく変えないのは難しい、だがあからさまに顔に出したりはしない。……ただの一般人じゃなさそうだな。 「いや、そんなことはない。ただ、どう説明していいか考えていただけだ。……もともとこの男には用があった。ついてきてほしいと交渉したんだが、素直には飲んでくれなくてな。やむおえず、眠ってもらった」  リスクは伴うが、この対応がベストだろう。無理に嘘をついて疑われてもかなわない。まずは俺のことを信じてもらうことが最優先だ。……ただ、やはり少し疑問に思うことがある。煙が出始めたところから見ていたというのが本当なら、俺が能力を使い始めるころだ。そのころならまだ完全に憑依はさせてないし、冷静さもちゃんと持っていた。なんでこいつの存在に気づかなかったんだ……
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