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RRRRRRRRR
ゆっくりと携帯電話を取りだして通話ボタンを押し、耳に宛てる。
「お、落ち着いて聞けよ…」
友人の取り乱した声。
「アイツがな、死んだって…」
嗚咽を漏らしている友人の声を、どこか自分には関係のないことのように聞いていた。
「今日、お前の誕生日なのにな…」
皆で盛大に祝ってやろうって、昨日、話してたのに…と友人は言葉を詰まらせた。
「アイツはね、雪になったの」
それは友人にではなく、自分に言い聞かせる為に。
「冬になれば、私の為に、空から降りてきてくれるんだよ」
儚さ故に綺麗な姿で、優しく私に流れ込む為に。
「だから私は、寂しくなんかない」
忘れない。
私は雪を見る度に、彼を思い出す。
最後に私に逢いに来てくれた彼を、雪の中に見るから。
微かな雪の落ちる音は、私の名前を呼ぶ君の声。
「忘れないよ、絶対」
私が死ぬその時まで、ずっと。
それが君の、望みだったんでしょう?
そして私も、望んでいること。
君を、忘れたくないから。
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