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胸がキュッと音を立てた。
苦しくて、切なくなった。
「ダメ、じゃない」
「こうやって、不安になったら聞かせて?流花の音を。何回でも生きてるってここにいるって教えてあげるから」
和音の手を振り払って、和音を抱き締めた。
縋り付くように、体温さえ奪うように。
強く、ひたすら強く。
これは“愛情”じゃない。
“恋”だけど“キレイなもの”じゃない。
「ずっと、傍にいて僕が僕でいれるように」
「うん」
小さく零した言葉を和音は拾ってくれた。
これは“依存”だ。
だから抱きしめ返してくれる和音の腕は優しいのに、僕は力加減を同じにできなかった。
でも和音は「苦しい」と拒否してこなかった。
それが嬉しかった。
二人で一人が当たり前だった。
けどこれからは一人で一人。
僕が“流花”になれるようになったら、たぶん和音と同じ力加減で抱きしめれるようになるから。
それまであなたは待っててくれるだろうか?
待っててほしい。
END
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