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ある世界、ある時代で
ひとつの城が
一夜にして滅んだ。
巨大な蕀(イバラ)に包まれた
城壁はボロボロに
朽ち果て、崩れ落ちて
所々には穴が開いている。
城内部も勿論
嵐でも通ったのかと
思わせる程に
家具は倒れ、壊れ
食器等の小さいものは
床にばらまかれている。
そして
静まり返った
城内部に残された
無数の彫刻。
子供から大人、動物等
種類は様々だが
一様に皆、恐怖に染まった
そんな表情をしている。
まるで、直前まで
生きていたかのように。
何故こうなってしまったのか。
その真相を知るのはただ一人。
朽ち果てた城の外で
一人の若者が立ち尽くす。
世に珍しき蒼い"和服"を
召した彼は城を見上げて
悲しそうな眼をする。
手にはひとつのシルバーネックレス。
それはシンプルな
小さな十字架を模したもので。
若者はそれを
自らの首に付けると
一言、城に向けて残し
くるりと踵を返し
城を後にした。
「絶対、助けるから――…」
カランと下駄を鳴らし
真っ白な長い腰帯を
風にたなびかせ
歩いていくその背中には
黒い十字架を背に
猛る白い龍の姿が
刺繍されている。
城の名前は"Nalm(ナルム)"。
若者の名前は――…
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