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まだ何か不満を言いたげなその唇に有良は素早く自分の唇を押し当てた。ほんのり香るアルコールと煙草の匂い。兄には無い、タキシードの下から湧き上がる体臭も慣れ親しんだ父親の匂い。有良の舌が思う存分瑠都の咥内を翻弄し、両腕が力の抜けた華奢な身体を優しく抱きとめる。うまく息が継げずに喘ぐ瑠都。
「本当は私が一番可愛いお前を手放したくないのだが。でもまあ、それも仕方ない」
無骨な手が瑠都のドレスをゆっくりと剥いでゆく。実の娘でありながら欲情する獣の如き自分の姿を知った妻の死因はおそらく精神的ショックと心労に違いない。罪深き夫罪深き父親罪深き我自身よ!
そう自覚しつつも、この掌中の珠の無限なる魅力に抗うことは不可能だ。
窓から青白い月明かりが射し、ベッドで絡み合う堕落した父娘を鮮やかに映しだす。
「皆さまのお相手はよろしいんですの?」
「ああ、次期当主の絵麻緒がなんとかやってくれるだろう」
暗闇に白く浮かび上がる瑠都の白磁の肌。つるりとした腹を有良の指がなぞると、ふるりと可愛く全身に震えが走る。
果てた後。シーツに俯けとなり気だるげに流し目を送る瑠都の妖艶な笑みはもはや父親に向けたものではなく、最愛の男に向けたもの。
「腹が空いたな……。何か持ってこさせよう。瑠都、お前はどうだ?」
問われて、瑠都はまるで幼女のようにくすっと無邪気に笑って首を振る。
「私、今日はもうお腹いっぱいですわ。立て続けに美味しい物をたくさんいただいて。暴食は健康に良くありませんもの。遠慮させていただきます、お父様」
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