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夕日に包まれた校舎に流れるのはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番第一楽章。その優雅な音色が突如として止んだ。
「ん……瑠都お姉さま……そんなことしたらピアノが弾けなくな……あ……」
「チャイコフスキーなんかより、直美とこうしていたい」
瑠都は直美の小柄ながらもふうわりと豊満な身体を背後から突然抱きしめる。びくんと怯える小さな肩。高鳴る鼓動。瑠都はゆっくりと直美の形の良い小さな耳元に顏を近付け熱い吐息を吹きかける。
放課後の乙女の禁断の遊戯。かりそめの姉妹の契約。静まりかえった音楽室。
「やっと私だけのものになってくれた。誰もがみんな可愛い直美を狙っていて気が気じゃなくて……」
「本当ですの? 直美は入学してからずっとお綺麗な瑠都お姉さまに憧れていましたの。そのお姉さまからお声をかけていただいて……もう夢みたい……」
「夢じゃないわ。私もずっとずっと直美のことが好きだったのよ」
細く長い指が顎を捕え、直美の愛らしい顔を自分の方に向かせる。瑠都は慣れた風にほんのり薄桃色のすべらかな頬に指を伝わせると直美はくすぐったそうにくすくすと笑う。さらりと揺れる髪を撫でつけると狙っていたかのように瑠都の唇が直美の頬に押し当てられた。
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