第一罪 暴食

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「ああ……瑠都だけの美しいお兄様。誰にも渡しはしませんことよ? ずっとずっとお慕いしておりましたの」  そうだ、この美しい妹も同罪だ。初めて罪を犯したあの夜、このベッドの中で同じ言葉をその濡れた唇で紡いでいた。欲が果てた後の、自分の腕の中で注がれた瑠都の狡猾で妖艶な流し目を、絵麻緒は今でも忘れられない。  神よ、天国の母よ。禁断の関係を続けている呪われたこの兄妹をどうか許したまえ! 「ああ、お兄様……瑠都はずっとお兄様を愛しているわ!」 「お集まりの皆さま。今宵は当川村家にお越しいただき誠にありがとうございます」  煌びやかなバカラのシャンデリアの下、髪を撫でつけ上背のあるがっしりとした体躯の当主・川村有良(ありかず)伯爵が満面の笑みを湛えてパーティーの開催を告げる。中年期にさしかかり、相応の年月をその容貌に刻んではいるが、彼の美丈夫ぶりは若き日の名残りをとどめ、さらに深みを増して熟成された魅力を醸しだしている。 「本日は長男絵麻緒の成人祝いにお越しいただきまことにありがとうございます」  まるで宝石をばらまいたかのように広間に散らばる豪奢な礼服に身を包んだ紳士淑女たち。その好奇と倦怠と羨望が入り混じった数多の視線が一斉に有良に集中する。高揚感極まっているのか、有良の額には汗が滲み、それでも平静を保とうとして一呼吸吐くと、両脇に控えていた二人の子供達の腰に腕を回し引寄せる。愛する子供達の顏を見て落ち着いたのか満面の笑顔を浮かべる。
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