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「だから今は、誰も愛せない」
微笑んだまま、独り言のようにそう呟いた彼女は本当に儚く触れたら何処かに消えてしまいそうで。
俺は思わず、彼女の名を呼んだ。
「…っ永井さん」
「んー?なーに高岡くん」
振り返る永井さんの髪が揺れてほのかなシャンプーの香りが鼻を擽る。
まるで中学生の様に高鳴る胸の鼓動に馬鹿みたいだと笑う。
「……俺、恋がしたいんだ。だから永井さん、付き合ってよ」
永井さんが好きだとは言えなくて、俺はどこまでも根性なしだと改めて思い知る。
「……っ高岡くん、それは…」
「愛せないなら、恋をすればいい」
周りからすれば安直な考えだと
笑われるだろうか。
それでも良い。
誰か素敵な人と……できることなら俺と。
恋をしてほしいんだ。
不恰好でも良いから、できるだけ彼女が笑ってくれる様な恋を。
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