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今年のクリスマスは3連休のあとにやってくる。
そのあと29日から1月4日まで正月休みがある。
実家に帰ろうかどうしようか、クリスマスを通り越して年末年始のことを考えていた。
3連休が明けるとクリスマス。
連休だったおかげで朝から忙しくて、今日はクリスマスだから彼氏と約束が…と定時で帰っていく同僚たちを見て。
どうやら家庭を大事にしている禿げた上司も時計を気にして。
「高山、残業頼めるか?頼めるよな?」
と、ほぼ無理矢理、仕事を押しつけて帰っていきやがった。
どうせ彼氏いないよっ。
クリスマスでも、どうせ予定なんかないよっ。
…あぁ、なんかもう、この会社の人全員に彼氏がいないこと、知れ渡っていそう…。
なんて泣きそうになりつつ、一人で黙々と仕事を片付けてオフィスを出る。
もう9時を過ぎている。
サービス残業。
残業手当てをつけてくれるなら、もっと喜べるのに。
でもクリスマス。
なんにもしないで家に一人でいるよりはいいかも。
昨日のイブなんか、ひたすら家に閉じこもってテレビを見ていただけだったし。
それに比べれば、たぶんきっとマシ。
自分に言い聞かせるように思って、いつものようにエレベーターに乗る。
今日はさすがに隣のオフィスの男前もいない。
彼女とデートでもしているのだろう。
1階のボタンを押して、閉まるボタンを押して、扉が閉まりかけたその時。
「待ったっ。乗りますっ」
なんて声が聞こえて、扉から手がにょきっと。
慌てて開くボタンを押すと、隣のオフィスの男前が乗ってきた。
「すみません。ありがとうございます」
なんて普通に話してる。
「いえ…」
それしか答えられなかった。
会話をするきっかけのようにも思うのに。
クリスマスなのに残業ですか?とか。
彼女いないんですか?とか。
せめて、お疲れ様です…とか。
何かを言おうと思っても、何も言えなくて、またいつもの無言の二人きりの空間。
息苦しい。
会話を…なんて思うから余計に息苦しいのかも。
なんか呼吸さえうまくできない。
エレベーターの扉が開いて、私はいつものように彼に先に出てもらう。
「お疲れ様です」
向こうから言ってくれた。
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