プロローグ

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「分かった?あれじゃ、あなたが痴漢した人、私が痴漢された人と思われても仕方ないわ」 あの視線ってそういう意味だったのか…。 不覚。 あーもーなんなんだよ。今日は。 俺はまたしても立場が悪くなっていたようで、それが自分の失言によるものだと分かって脱力した。 「それで、どうする?」 「え?ああ…うーん」 「痴漢は犯罪だから、てっきり訴えるんだと思ってたけど、被害者であるあなたの意見を聞かずに行動してた。先走っちゃってごめんなさい」 「いや、俺もどうしたいのか考えるべきだった」 被害届けか。 考えもしなかったな。 ただムカついてたから怒鳴りつけてやりたかったくらいで。 駅員に引き渡すってのも、そういうものかと思っただけだったし。 そもそも、気持ち悪かったことを除けば、男に痴漢されたくらいどうってこともないんだよな。 ホント気持ち悪くて二度とごめんだけど。 うーん。 証拠の映像まで撮ってもらって悪いけど、男も逃げたし、まあいいか。 ん? ふと気付いた。 「あんたが罪に問われることはないのか?」 「え?」 「だって、それって盗撮だろ。盗撮って犯罪だし」 以前、女生徒が盗撮被害にあって大問題になっていたことを思い出したのだ。
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