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「じゃあね。痴漢に合わないように気を付けて。それとあの男ブッ飛ばさない方がいいわ。暴行罪になっちゃうわよ」
「え、おい、今度って――」
適切なと言うべきか――アドバイスを残して女は足早に去って行った。俺は慌てて声を掛けたが、改札を通り抜けた後は人混みに紛れてしまって、その姿を見つけることは出来なかった。
俺は、女の言葉の意味を捉え兼ねてその場に突っ立っていた。
後悔?今度会った時?
どういう意味だ?
そういえば、彼女の降りる駅はここだったのか。
同じ線に乗ってるからまた会うこともあるだろうってことか?
確率低いだろ。
一限と言っていたことも思い出した。
やっぱり学生だったのか。この駅だとS大か。
一限…。
あ!
学校!
俺は慌てて腕時計を見た。
そして思い出したことがもう一つ。
ヤバい。職員会議の書類、俺が持ってるんだった。
もう始まってる。完全に遅刻だ。
教頭の小言確定に、俺は頭を抱えた。
ネチネチと面倒くさいんだよな、あの教頭。
なんて言ってる場合じゃねえな。
俺は、ポケットから携帯を取り出すと学校に電話をかけた。
なんて言い訳するか…。
呼び出し音を聞きながら、どう言い訳するかを考えつつ、俺はホームに戻るため歩き出した。
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