3人が本棚に入れています
本棚に追加
え?
いや、まさか。
気のせいだよな。
うん。
俺は、考えを打ち消した…のに!
それも束の間。
うわっ!
ゾワッと鳥肌が立つ。
マジか。
マジなのか。
だって、俺だぞ?
男の俺に、まさか、まさか――。
痴漢する奴がいるなんて思わねえじゃねえか!
でも、どうも勘違いじゃないようだ。
人が黙っていることをいいことに尻を撫でまわしやがって!
「おい!」
俺はとうとう我慢の緒が切れ、叫ぼうとしたが、その前に聞こえた苦痛の声に出鼻を挫かれた。
「いたたたたっ!」
おもむろに振り返ると、中年男が、関節技を決められて痛さに顔を歪めていた。
え?
一瞬、状況が分からなかった。
だって、細見でガタイがいいわけでもない女が、涼しい顔をして一介の男の腕を締め上げているなんて予想外すぎる。
まあ、俺が痴漢にあったってことが一番の予想外だが。
「離してくれ!私がいったい――」
「痴漢してたでしょ」
コイツが?
俺は目を向いた。
犯人の性別なんて考えてる暇なかったが、こんな奴に触られていたのかと思うと、体中に悪寒が走る。
「濡れ衣だ!」
その言葉にカチンとくる。
最初のコメントを投稿しよう!