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「は?」
「ボタンを押したらこの人によく画面が見えるようにこっち向けてね」
俺の疑問符はことごとくスルーされて指示をしてくる。
なんなんだよ。まったく。
憮然としながらも、その態度は有無を言わさないもので言う通りにせざるを得ない。
携帯を見てみると、画面には動画再生アプリが起動していた。
俺は訳が分からなかったが、言われた通りボタンを押して画面を男に近付けた。
自分からは画面が見えないので、何が再生されているのか分からなかったが、男の顔が見る見るうちに青ざめていくのは分かった。
どうしたんだ?
「言い逃れ、できないよね?」
「……っ」
乗客達にも変化は起こっていた。中年男には厳しい眼を向け、俺には憐れみの目を向ける。
なぜか拍手をしている奴もいた。
なんだ?いったい携帯に何が…。
俺は、携帯画面を自分の方に向けた。さっきと同じ画面になっている。
これを見てたんだよな?
俺は顔を上げて女を見た。女が頷く。了承を得たと思い、俺は再生するためボタンを押した。
すると、そこには…。
え?
おい…。
おい…。
おい!
「これ…」
「あなたがこの男に痴漢されているところ」
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