プロローグ

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「こんなの撮ってたんなら助けろよ!」 「でも、ほら、こんな風に言い逃れする輩がいるから、やっぱり証拠は押さえとかないと」 「う…」 「バレないようにするの大変だったんだから。周りの人に協力してもらってやっと撮ったのよ」 頷いている奴が何人かいる。 よく見てみれば、それはあからさまに目を逸らした奴に拍手していた奴らだ。 見て見ぬ振りしてたくせに何したり顔で頷いてんだよ! とは言っても反論しづらい…。この映像がなけりゃ、あの雰囲気だと俺の立場が危うくなっていた。 だけど、俺が気持ち悪い思いしてる間、お前らは揃いも揃って助けもせず撮ってたってことだろ?それはそれで納得できねえ。 結果それに助けられてるにしてもだ。 納得いかない気持ちと納得せざるを得ない気持ちが交錯してモヤモヤする。 でも…。 やっぱ腑に落ちねえ! くそー! 俺は携帯を片手に葛藤していた。 そうしている間にも電車は確実に進んでいて到着する駅を知らせるアナウンスが車内に流れた。 通勤、通学の時間だ。人のことに構っている時間などあるはずもなく、駅に着いて扉が開くと、ぞろぞろと乗客が降りて行く。
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