種の歌

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  ふと気付いた時、私は少女の小さな手の中にいた。黄金色をした、小さい太陽のような姿の兄弟達と一緒に。 「パーパ」 精一杯、背伸びをした少女は、小さな指で背の高い男の服をつまんだ。 少女の声に気付いた男は微笑みながら振り向き、しゃがみ込んで私の兄弟を受け取ると、ありがとうと言って、そっと少女の体を抱きしめる。 どこか悲しそうな男の様子に気付いたのか、少女は私を男の目の前に差し出した。 「笑って?」 少女の笑顔につられて男が笑う。 男は私に顔を近付けると、フッと息を吹きかけた。 私の体は風に乗って空に舞い、遠い遠い旅が始まる…。 .
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