不可視

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――――― 「いらっしゃい」  屋台のラーメン屋に置いてあるテレビの番組を、たった今やって来た人物――林原が変更する。相も変わらず夜空には、星と飛行機の光が輝く。  映り出されたのはニュース番組だった。それを見た店主は、林原に話しかける。 「人様を殺しておいて自分は焼身自殺だって、物騒な話だねえ。兄ちゃんも気を付けなよ、世の中、何が起こるか分からんからねえ。」 「ははっ、そうですね。あ、味噌一つね」  はいよ、と店主は活き良く返し、調理を始めた。林原は黙ってニュースを見ていたが、その表情は明るいものだった。  林原が頬杖をつくと、店主は湯切りをしながら林原に話しかける。 「そういえば知ってるかい? 最近、この辺りでお化けが出るって噂」 「へえ。おじさんって、そういうの信じているんですかー? 全然そうは見えないけど」 「人の内面なんてそう簡単には見えんものさ。それにね、この辺で出られると売り上げの邪魔で仕方なくってね。はい、お待ち」 「大変ですね。いただきます」  口を使い、割りばしを二つにして麺をすする林原。うまいと言った直後、彼の頬は緩み、口角はつり上がっていた。
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