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小坂の家は、昔、父親の作った借金のせいで苦労していた。
夜遅くまで両親が共働きなのは当たり前。小坂も高校入学して直ぐ、少しでも学費を浮かせるためバイトに明け暮れたことがある。
借金の額を小坂は知らないが、今はもう、ごく普通の家庭と遜色のない生活を送っている。そう小坂は思っていた。
「おい! ナイフを貸せ」
「あっ、ああ」
林原は、小坂の父親からナイフを強引に奪う。
「トロいんだよ、てめえら親子は!」
と、林原は怒鳴り散らし、小坂の父親に蹴りを入れた。腹を蹴られた小坂の父親はうずくまり、蚊の鳴くような声ですすり泣いた。
まさか、保険金目当てで実の息子を手にかけるとは。おそらく潤の払った慰謝料も、受け取った小坂の父親が二人に返したのだろう。
潤を殺し終えて、林原が愚痴り出した先の内容を聞いてしまった小坂は、ただ呆然と、潤がめった刺しされる姿を見るだけとなった。
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