海辺

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「だから、恵子おばさんから言われたのよ。おばあちゃんは若い頃、結婚問題で苦労したから、よーく解ってる。話を聞いてごらんって」 由貴はマッサージの手を止めて、祖母の顔を覗き込んだ。 「ふふ……恵子は、お節介やきね。どうして、あんた達の結婚に水を差すような事を言うのかしら? あんた達……恵子のところに顔を出したの?」 高台の窓辺からは太平洋が見渡せる。 幸子は漠然と窓に眼を遣りながら訊き返した。 「ううん。そうじゃなくて、映画を観た帰り道で偶然に恵子おばさんに会ったのよ」 由貴は肩揉みを再開する。 「ああ、そういうこと。恵子は挨拶の仕方とか細かい事にこだわる性質だから彼の態度が気に入らなかったのかしらね?」 「そんな風には見えなかったけど」 「あんたの両親を引き会わせたのは恵子なのよ」 「えっ? そうだったの? 知らなかった」 「うふふ……だからね。恵子は自分が月下氷人になりたくて仕方がないの。ありがと。もういいわ」 幸子はソファーから立ち上がり窓辺に置いてあるロッキングチェアに座り直した。 「げっかひょうじんって?」 由貴は祖母の背中へ問い掛けた。 「縁結びの仲介者……仲人のこと」 「ふーん、そういう意味なの。知らなかった。お茶を淹れましょうか」
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