四章 偶然は集結し、終結に向かい始める。

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  「雛乃はあおちゃんの紐を解いてやってくれ。久ノ宮は私に協力してくれると助かる。あんたそこらの不良よりはずっと喧嘩慣れしてるだろ? あいつと闘りあうのはちょっとばかし骨が折れそうだ」 「……おーけー」  愛加ちゃんは後ろを見ずに、久遠に問いかける。久遠は二つ返事で了承した。真剣な表情で前方に視線を向けている。 「――それじゃ行こうか。なあ『死体築き《デッドメーカー》』……!!」  厳しい戦いが――始まった。    =姫傘相(ひめかさあい)=  見る者に小動物のような印象を抱かせる姫傘相は、夜の闇の中、蒼石家の前にいた。 「あおちゃん先輩は一体なにをするつもりなんですかね……?」  呟きながら、インターホンを鳴らす。 「はーい、いま行きまーす」  家の中からぱたぱたと足音が聞こえてくる。音がだんだん大きくなると、バタン! とドアが開いた。中から姿を現したのは制服姿の蒼石芹乃だった。芹乃は姫傘を見ると、きょとんと首を傾げる。 「あれ? 姫じゃん。どうしたの?」 「えっと、ちょっと用事があってね」  姫傘はもじもじと恥じらうように言う。 「兄ちゃんはいないよ?」 「いや、その、今日はあおちゃん先輩じゃなくて、芹乃に用があって来たの」 「へ? 私?」  姫傘はこくんと首肯する。 「ふうん? まあ、いいや。上がってよ」 「えっと、それじゃあ、おじゃま……します」  姫傘はおどおどと居心地悪そうに玄関に入る。靴を脱ぎ、上がった。 「初めてじゃない? 姫が兄ちゃんのいないときにこの家に上がったのって」 「う、うん。初めて、だね」 「なんで緊張してんの?」 「いや、その……」 「おーい芹乃ぉー、ご飯おかわりー!」  リビングのほうから蒼石虹葉の声が聞こえた。姫傘はびくっと肩を震わせる。 「ははあん。なるほど」  姫傘が何に怯えているのかわかったらしい芹乃が、意地悪な笑みを浮かべた。姫傘は目を伏せる。
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