26人が本棚に入れています
本棚に追加
「雛乃はあおちゃんの紐を解いてやってくれ。久ノ宮は私に協力してくれると助かる。あんたそこらの不良よりはずっと喧嘩慣れしてるだろ? あいつと闘りあうのはちょっとばかし骨が折れそうだ」
「……おーけー」
愛加ちゃんは後ろを見ずに、久遠に問いかける。久遠は二つ返事で了承した。真剣な表情で前方に視線を向けている。
「――それじゃ行こうか。なあ『死体築き《デッドメーカー》』……!!」
厳しい戦いが――始まった。
=姫傘相=
見る者に小動物のような印象を抱かせる姫傘相は、夜の闇の中、蒼石家の前にいた。
「あおちゃん先輩は一体なにをするつもりなんですかね……?」
呟きながら、インターホンを鳴らす。
「はーい、いま行きまーす」
家の中からぱたぱたと足音が聞こえてくる。音がだんだん大きくなると、バタン! とドアが開いた。中から姿を現したのは制服姿の蒼石芹乃だった。芹乃は姫傘を見ると、きょとんと首を傾げる。
「あれ? 姫じゃん。どうしたの?」
「えっと、ちょっと用事があってね」
姫傘はもじもじと恥じらうように言う。
「兄ちゃんはいないよ?」
「いや、その、今日はあおちゃん先輩じゃなくて、芹乃に用があって来たの」
「へ? 私?」
姫傘はこくんと首肯する。
「ふうん? まあ、いいや。上がってよ」
「えっと、それじゃあ、おじゃま……します」
姫傘はおどおどと居心地悪そうに玄関に入る。靴を脱ぎ、上がった。
「初めてじゃない? 姫が兄ちゃんのいないときにこの家に上がったのって」
「う、うん。初めて、だね」
「なんで緊張してんの?」
「いや、その……」
「おーい芹乃ぉー、ご飯おかわりー!」
リビングのほうから蒼石虹葉の声が聞こえた。姫傘はびくっと肩を震わせる。
「ははあん。なるほど」
姫傘が何に怯えているのかわかったらしい芹乃が、意地悪な笑みを浮かべた。姫傘は目を伏せる。
最初のコメントを投稿しよう!