四章 偶然は集結し、終結に向かい始める。

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  「まあ、確かに兄ちゃんに近づく女はすべて皆殺し、みたいな考えの人だからね、虹葉お姉ちゃんは」 「今日、喫茶店で会ったの。そしたら怒ってて」  芹乃は苦笑する。 「あの人はバカだから気にしなくていいよ。それに姫は兄ちゃんっていう最強の後ろ盾があるじゃん。虹葉お姉ちゃんは兄ちゃんにはなんだかんだで勝てないからね。溺愛しすぎて。……って言っても、普段はそうでもないけれど」 「芹乃は?」  姫傘は伏せていた顔を上げた。芹乃は面食らったように目をぱちくりさせている。 「へ? 私?」 「芹乃もあおちゃん先輩のこと好きなんでしょ?」  姫傘は上目づかいに芹乃の顔を窺う。 「な、なんで私が兄ちゃんを……」  芹乃は逃げるように目を逸らした。 「あやしい」 「そ、そりゃあもちろん嫌いではないけれど」  もごもごと、ごにょごにょとはっきりしない声で言う。 「じゃあ好きなんだ?」 「べ、べつに私は」 「でもあおちゃん先輩は芹乃のことが大好きだって言ってたよ?」 「っ…………!」 「あ、顔赤い。図星なんだ」 「ああもう! さっさと私の部屋に上がって待ってて! 私に用があるんでしょ!?」 「うんっ。じゃあ芹乃の部屋で待ってるね!」  たたたっと階段を駆け上がり、姫傘は芹乃の部屋へと入った。芹乃が上がってくるのを待つ。 「お待たせー、お菓子はこれでいいってちょっとなんで私のタンス漁ってるのよ! 下着をまじまじ見るなあ!」 「いやー、あおちゃん先輩に頼まれちゃって」 「あ、あの変態……っ!」  顔を真っ赤にさせ、肩を震わせる芹乃だった。
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