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「――ひっ!」
少女は怯えていた。
「い、いやっ! やめて!」
少女の周りには五人のチンピラ風の男たちがいる。
男たちは下卑た笑みを顔面に貼りつけ、少女を取り囲んでいた。
個人経営の小さな書店からほど近い裏路地で、少女は恐怖に身体を震わせていた。
なんでこんなことに……、と考えのまとまらない混乱している頭で、少女はほんの数分前のことを思い返す。
学校の帰りに少しだけ寄り道をし、学校で実施されている読書タイムなるもののために、少女がいま熱中しているシリーズの最新巻を購入した直後のことだった。
手に入れた本を通学鞄に仕舞い込み、外に出た少女は進行方向を右に曲げた。
と、次の瞬間、肩がなにかにぶつかった。
「……あん?」
強面の、いかにもといった男だった。
男は訝しげに眉をつり上げると、少女の身体を頭から足の先まで舐めるように凝視する。下品な視線だった。
少女は背筋を走る不快感から、思わず肩を震わせる。
ぞわり、と鳥肌が立った。
「……へぇ」
男は唇の端を歪めると、「おい、お前ら」と周りに声をかけた。
すると、それまでは駐車場にたむろしていたのか、不良然とした男たちが靴底をだらしなく擦りながら、ぞろぞろと現れた。
少女はなすすべなく不良たちに囲まれてしまう。
金や茶、黒に紫などカラフルな頭をした男たちは、少女がたったいま肩をぶつけた男に怠そうに近寄ってくる。
「んだよ、なんかあったんか?」
「早く肉まん買ってこいって。ジャンケン負けたべ」
「いや、見ろよ、この子。可愛くね?」
その言葉に、不良たちは視線を少女に向けた。さっきの男と同じように、不良たちはじろじろと、獣を思わせる本能を剥きだしにした視線を送ってくる。
受け止める少女はまたしても悪寒に包まれた。
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