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「なんだあ、泣いてんのかよ、嬢ちゃん。だーいじょうぶだって、すぐに気持ち良くなるから」
「おい、タオルまだかよ」
「もうすぐだろ」
「あいつもグズだなあ、おい」
少女の口を手でふさいでいる男は、呆れたように言う。
そのときだった。
「――――!」
悲鳴だった。
悲鳴が、路地裏に響く。
それは、少女の悲鳴ではない。
そもそも口を塞がれている少女に、悲鳴を上げる手段はない。
「お、おい、今の誰の声だよ?」
「お、俺じゃねえぞ」
「俺でもねえ」
「はあ? お前らじゃねえってんなら誰だよ。俺でもねえぞ」
不良たちの顔に、徐々に不安の色が広がっていく。
「おい、ケンタのやつはどうした? もういい加減持ってきてもおかしくねえだろ」
「誰か様子見てこいよ」
「お、おう、わかった。俺がちょっと見てくる」
一人の不良はそう言うと、路地裏から出て行った。
直後。
「っ――――!?」
二度目の悲鳴が、辺りに響いた。
次いで、どさり、となにかが地面に落ちたような音も。
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