清冷の朝に

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  もう大丈夫。 気持ちが戻ることはない。 髪を括ると掃除機を引っ張り出してきて、早朝にも関わらず部屋中に散らばった鎖の破片を吸い込んだ。 掃除機は鎖の破片と残った僅かな想いをぐんぐん吸い込む。 色の戻った世界は嘆声を漏らしてしまいそうなほど晴れやかで、つい鼻歌も零してしまう。 「私も早く子供欲しいなぁ」 そしたらガーゼを買うんだ。 キャラクターがプリントされた、うんと可愛いやつ。 まだ見ぬ旦那様と、私と、子供と。 想像しただけで頬が緩んだ。 今日は記念日。 ロマンスと言う名の不貞行為が終わった日、ではない。 ――新しい毎日が始まった記念日なんだ。  
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