清冷の朝に

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  自分の携帯のアラーム音が聞こえてそっと目を開けた。 夜明け前の、見慣れた私の部屋。 キンと冷えた空気に手を伸ばし、直ぐ脇にあるサイドテーブルの上で震える携帯を取ろうとしてその手が止まる。 …いや、止められる。 自分の白い腕に絡みつく、ごつごつと骨張った大きな手。 その情景が酷く淫猥なものに見えて、ドキリと胸が高鳴る。 大きな手は私の手を絡め取りながら布団の中へ引き込み、大きな身体が私を背後から抱き締めた。 「…いーよ。そのうち鳴り止むから」 耳元で聞こえる、愛しい人の甘く掠れた声。 素肌同士が直接触れ合い、そこから優しく体温が混じり合う。 がっしりと絡まる彼の腕は、まるで鎖のようだと思った。 …このまま溶け合ってしまえばいいのに、なんてありふれた恋愛の文句を、私は今日も思う。  
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