24人が本棚に入れています
本棚に追加
「…久保さん、時間……」
二回目のアラームが鳴り始めると、彼は離れがたそうに絡ませた腕に力を入れた。
…ああ、捕らわれる……。
…頭の中で鎖がきつく締まる音が聞こえた気がした。
彼はそのまま私のうなじにキスを落とすと、ゆっくりとその腕を解いた。
「シャワー借りるよ」
「はい」
彼が寝室から出ると、彼の温もりが残る布団を頭から被った。
この関係は、もう二年になる。
奥さんの為にも。
子供の為にも。
彼の為にも。
…自分の為にも。
もう終止符を打たなければならないとわかっているけれど
――私にはあの温かい鎖を断ち切ることは出来ない。
奥さんの怒りの刃なら断ち切ることが出来るんだろうか。
社会的制裁を受けて、周りから罵られれば断ち切ることが出来るんだろうか。
目を瞑って考えてみても答えは出ない。
…このままでは、何も変わらない。
最初のコメントを投稿しよう!